桃沢川の吊橋群【かじか橋・もんざわ橋・あまご橋】/静岡県沼津市・駿東郡長泉町

橋梁とか土木構造物とか

桃沢川砂防堰堤

場所はこのあたり

長泉町北西部、沼津市との市境付近を流れる狩野川水系桃沢川。
その上流部にある「水と緑の杜公園」に3つの吊橋があると聞いてやってきた。

写真に写ってるのは桃沢川砂防堰堤。
昭和63年(1988年)に建設された砂防ダムである。
ちょうど堰堤脇に駐車場があるので、ここに車を停めて探索を始めることにした。

桃沢川は狩野川水系黄瀬川の支流で、愛鷹山中に源を発し、長泉町を南へ流れ、やがて黄瀬川へ合流する。

現在は「ももざわがわ」と呼ばれているが、古くは「もんざぁがわ」とも呼ばれていたようだ。

源流となる愛鷹山には侵食によって無数の谷が放射状に刻まれており、これを「愛鷹の百谷(ももたに)」と呼んでいた。
そこから「百沢」、さらに「桃沢」と表記されるようになったものと考えられている。

ちなみに「桃澤」という名称自体は非常に古く、平安時代の『延喜式神名帳』にも「桃澤神社」(現在の長泉町元長窪にある桃澤神社のことと思われる)の名を見ることができる。

公園の案内図があった。熊出没注意と警告されている。

案内図を見ると、目的としていた3つの吊橋もしっかり描かれている。

この「水と緑の杜公園」は、桃沢川の砂防事業に関連して造られた公園である。

桃沢川は古くから土砂災害に見舞われてきた荒廃渓流で、昭和63年(1988年)に砂防堰堤が建設された。

その後、静岡県によって平成7年から12年(1995~2000年)にかけて、渓岸保全工を中心とした「桃沢川砂防環境整備事業」が実施されている。

渓岸保全工とは、流水によって川岸が削られたり崩れたりするのを防ぎ、渓流を安定させるための工事である。

この県による砂防環境整備と合わせて、長泉町も砂防施設と一体となった公園整備を進め、平成10年(1998年)に「水と緑の杜公園」が整備された。

もっとも、この時点ですべての施設が完成したわけではない。

その後も園路や水景施設、駐車場などが段階的に整備され、現在の公園へと形を変えていった。

今回紹介する3つの吊橋も、こうした長年にわたる公園整備の中で順次架けられたものである。

かじか橋

砂防堰堤から桃沢川沿いの遊歩道を進んでいくと、ほどなくして最初の吊橋が見えてきた。

かじか橋である。

竣工は平成12年(2000年)3月
今回紹介する3橋の中では最も古く、後に登場する「もんざわ橋」「あまご橋」より一足早く、この公園に架けられた吊橋である。

一般的なH型主塔の地碇式単径間無補剛吊橋

水はかなり透き通っていて綺麗である。

橋の名前の通り、かじかでもいるのだろうか。

かじか橋

河川:桃沢川
市町村:長泉町
道路区分:遊歩道
道路種別:人道橋
竣工年:2000年(平成12年)
形式:単径間無補剛吊橋
主塔:木製H型
主索本数:2本
耐風索:あり
床版:木床

場所はここ

もんざわ橋

かじか橋から桃沢川沿いの木道を歩いていくと、2つ目の吊橋が見えてきた。

かじか橋よりかなり立派に見える

「もんざわ橋」と言うらしい。

一風変わった名前だが、これは先ほど触れた桃沢川の古い呼び方「もんざぁがわ」に由来するものと思われる。

橋名の由来を直接記した資料までは確認できなかったが、「もんざぁがわ」と「もんざわ橋」という名称の近さを考えれば、古くからの呼び方を意識した橋名なのだろう。

銘板によれば、竣工は平成22年(2010年)3月。平成12年(2000年)竣工のかじか橋より、10年ほど新しい橋になる。

人道吊橋としてはかなり大きく、そして頑丈につくられている。

長泉町は財政力指数が高く、裕福な町として有名だ。
昭和58年度以降はずっと1を上回る状態を維持しているという。

もちろん、この橋が立派なのと町の財政力に直接関係があるかは分からないが、こうした公園施設を見ていると、ついついそんなことまで考えてしまう。

橋の下では川遊びをしている人たちの姿も見える。
桃沢川の水はここでも透き通っており、水辺の公園として整備された理由もよく分かる。

対岸側は階段になっている。

橋を渡り終え、そのまま遊歩道をさらに下流へ進んでいく。

もんざわ橋

河川:桃沢川
市町村:長泉町
道路区分:遊歩道
道路種別:人道橋
竣工年:2010年(平成22年)
形式:単径間無補剛吊橋
主塔:鋼製H型
主索本数:2本
耐風索:あり
床版:FRP

あまご橋

もんざわ橋から竹林の中を通る遊歩道を下ると、最後の吊橋が見えてきた。

「あまご橋」である。

竣工は平成21年(2009年)。

翌平成22年(2010年)に竣工したもんざわ橋とはほぼ同時期に造られており、橋の造りもよく似ている。

鋼製H型主塔に2本の主索、FRP製の床版を備えた単径間無補剛吊橋で、基本的な構成はもんざわ橋とほぼ同じである。

「あまご」という橋名も、山間の清流を代表する魚であるアマゴからか。

最初に渡った「かじか橋」と合わせて考えると、桃沢川の自然を意識して名付けられたのだろうか。

このあたりでも、川遊びをしている人がちらほらいる。

あまご橋

河川:桃沢川
市町村:長泉町
道路区分:遊歩道
道路種別:人道橋
竣工年:2009年(平成21年)
形式:単径間無補剛吊橋
主塔:鋼製H型
主索本数:2本
耐風索:あり
床版:FRP

桃沢川と水と緑の杜公園の整備史

ここまでの内容を時系列で整理すると、この一帯が現在の姿になるまでには20年以上の時間がかかっているのが分かる。

まず昭和58年(1983年)、現在の桃沢野外活動センターの前身となる「桃沢少年自然の家」が開設された。

その5年後となる昭和63年(1988年)には、桃沢川上流に砂防堰堤、いわゆる桃沢川砂防ダムが建設される。

さらに平成7年から12年(1995~2000年)にかけて、静岡県による「桃沢川砂防環境整備事業」が実施され、渓岸保全工などによって桃沢川の河岸や渓流環境が整備された。

こうした県の砂防事業と合わせる形で長泉町も公園整備を進め、平成10年(1998年)に「水と緑の杜公園」が整備されている。

ただし、この時点ですべての施設が完成したわけではなく、その後も公園内では園路や駐車場、水景施設などが段階的に整備されていったようだ。

平成12年(2000年)3月には、今回紹介した3橋の中で最も古い「かじか橋」が竣工。

木製H型主塔を持つこの橋は、後に建設された2橋とは少し異なる姿をしている。

その後、平成19年度(2007年度)には散策路や吊橋等を整備するための実施設計が行われ、平成20~21年度(2008~2009年度)には実際に散策路・吊橋等の整備事業が進められた。

この時期に平成21年(2009年)竣工の「あまご橋」、続いて平成22年(2010年)3月竣工の「もんざわ橋」が加わっている。

また平成21年(2009年)4月には、桃沢少年自然の家が「桃沢野外活動センター」へと改称された。

整理すると、

年出来事
1983年(昭和58年)桃沢少年自然の家が開設。現在の桃沢野外活動センターの前身。
1988年(昭和63年)桃沢川上流に砂防堰堤(桃沢川砂防ダム)が建設される。
1995~2000年(平成7~12年)静岡県が「桃沢川砂防環境整備事業」を実施。渓岸保全工などを整備。
1998年(平成10年)長泉町が「水と緑の杜公園」を整備。
2000年(平成12年)3月かじか橋竣工。
2007年度(平成19年度)水と緑の杜公園の散策路・吊橋等を整備するための実施設計を実施。
2008~2009年度(平成20~21年度)水と緑の杜公園で散策路・吊橋等の整備事業を実施。
2009年(平成21年)あまご橋竣工。
2009年(平成21年)4月桃沢少年自然の家が「桃沢野外活動センター」へ改称。
2010年(平成22年)3月もんざわ橋竣工。

という流れになる。

現在の水と緑の杜公園は、桃沢川の砂防対策を出発点として、河川環境の整備、公園化、遊歩道や吊橋の追加と、長い年月をかけながら少しずつ現在の姿へ整えられてきたのである。

今回巡った「かじか橋」「あまご橋」「もんざわ橋」の3橋は、そんな桃沢川の砂防と公園整備の歴史の中で生まれた吊橋たちだった。

参考資料・出典

  • 長泉町「水と緑の杜公園」
  • 静岡県「『水と緑の杜公園』の森づくり」
  • 長泉町「平成19年度 主要事業一覧」
  • 長泉町「平成20年度 主要事業一覧」
  • 長泉町「平成21年度 主要事業一覧」
  • 国土交通省沼津河川国道事務所『狩野川に学ぶ ~防災・河川環境教育実践ガイド~ 長泉町版』(桃沢川名称由来部分の原典:『長泉町史 上巻』)
  • 長泉町『行政資料集』
  • 橋梁の竣工年・構造等:現地銘板および現地調査

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