はじめに
以前、こんな記事を書いた

井川にある夢の吊橋を訪ねた際に謎の廃隧道があった。
事前情報もなく、後日調べても特にこの隧道に言及している人もいなかったので、正体がまるで分らなかった。
そもそもこのトンネルの反対側はどうなっているのか、どこにつながっているのかも分からず、それらしき場所をバイクやストリートビューで探したが結局見つからず、反対側はおそらく廃道化しているのだろうと推察していた。
この時、考察していたのは
①大井川鐡道井川線延伸計画の未成線跡
②井川ダム建設時のなにかしらの遺構
の2つだった。

まず、位置関係を確認しよう。
この謎の隧道は井川夢の吊り橋の東側に開口している。
現地を確認する限り、ほぼほぼ勾配はなく、直線的に貫通している。
このことから、松山段と呼ばれる岬状地形を最短経路で抜けるために掘削された可能性が高いと思われる。
また、井川夢の吊り橋は旧堂平駅から続く遊歩道を進むとたどり着く。
旧堂平駅はかつての大井川鐡道井川線の終着駅であり、そこからの延長線上にこの隧道が位置することから、井川線の延伸計画の跡なのかもしれないと、当初は思ったわけだ。
井川線には、井川ダム建設後に計画がされた畑薙ダム建設の際に桃ノ木島まで延伸する計画があった。
これについては、なぜかwikipediaに独立記事があるのでそちらを見てほしい
この記事では延伸用地の用地買収が進んでいたといった話がある。
実際にこのあたりの地形を考えると、堂平駅より井川本村に向かうには、この尾根に隧道を穿つのが最も自然なルートである。
井川本村は井川ダムの移転補償によりできた井川地区の中心集落であり、当初より井川本村までの延伸の要望もあったことから、この延伸線の未成線跡の可能性も十分あるのかなと思った。
そもそも立地的にも堂平駅と関係性があるのはまず間違いないだろうと思われ、未成線跡でないにしろ、ダム建設時のなんらかの資材運搬路であったのだろうと推察していた。
また、この二つの考察を裏付けるものとして、井川夢の吊橋にある不自然なものがあった。

それは、井川夢の吊橋東詰に、あきらかになにか隧道に関連していそうな遺構が残っていることだ。
そこには、現在の吊り橋には不釣り合いな巨大なコンクリート構造物が残されている。
一見すると、吊り橋の主塔の基礎のように見えるが、過去にそのようなものがあったんだろうか。
そうなると他にも遺構が残っているのかもしれない、隧道の反対側も気になる。
というわけで、とにかく現地に再訪することにした。
井川夢の吊橋

旧堂平駅に車を止め、西側からアクセスしてみた。
おそらくは西側にもなんらかの遺構があるのではないのか、そう思って探してみると…

いや、普通にあるな。
アンカーの跡なのか、なにかの巻上施設の基礎なのかは分からないが、至る所にコンクリート構造物が残っているようだ


訪問時が6月なのですでに緑に覆われているが、吊り橋より堂平駅に至る道路までの斜面には、なんらかの資材運搬施設があったような雰囲気がある。
逆に、平場のようなものは見当たらないので、未成線説はほぼなさそうである。

とりあえず、吊り橋を渡ろう


定員は5名のようだ。
資料により多少の前後はあるが、橋長は90m、高さは50mあるようだ。
実は高さだけで言うと畑薙大吊橋の30mより高かったりする。



井川夢の吊り橋は大井川の支流、中山沢に架かっている。といっても井川ダムの範囲なので、有名な寸又峡と同様に比較的綺麗な水面が見えて、結構人気なスポットにはなっているおうだ。
撮影中も何組かとすれ違った。

あれはアンカーブロックだな
かつて吊り橋があったのは確定か


そういうわけで、反対側へやってきた
謎の隧道へ

吊り橋を抜けると、すぐに隧道が見えてくる。

これを見るに、現在は静岡市が管理しているのだろうか。

振り返ると、ここが主塔基礎天端とちょうど同じ高さなことに気づく。
やはりこの隧道とその他の一連の遺構は関連がありそうだ

内部は特に土砂の堆積は見られず、覆工の剥離が見られるが大きな変形等はなく、無事に貫通しているようだ

ただ坑口部は覆工の裏側が完全に見えてしまってる。

しばらく中の様子を見ていたら、突然反対側からライトを照らされた。
何事かと思ったら、中から大量の蝙蝠が飛び出してきた。
どうやら中に人がいるらしい。
いったいどういうことだ?と思いながらしばらく待ってると、中から若い男性2人組がやって来た。
普通に半袖にサンダルの姿だった。観光客っぽい。
どこから来たのかと聞いてみると、反対側は県道60号に繋がっていると教えてくれた。
そんな馬鹿な、県道沿いは全て確認したはずだ。
『中は水がすごいですけど、通れますよ。おすすめはしませんが』
と言われた。
「これ、何のためのトンネルなのか分かりますか?」
『いやぁ、分かりませんね。人道用っぽさはありますけど』
多分そんな会話をしたと思う。
同業者なのか?さっぱりわからん。
この時は大井川鉄道井川線の普通運賃での運行の終了する月であったことから、鉄道マニアなのかもしれない。
そうなれば彼らも井川線の未成線を疑ったのか?

思いがけない遭遇もあったが、彼らの言う通り、サイズ感は人道クラスであろうと思う。
スケールで測ったところ、高さも幅も2.1mであった。これでは索道や無蓋トロッコはあり得ても、専用鉄道としては小さすぎるサイズだ。
隧道内部へ

内部にはパイプが走ってるのと、隧道内からの湧水により水路ができていた。

左右の壁にはクラックが発生している。


中央付近までくると、突然素掘り区間が出てくる。

素掘り区間は5mぐらいであった。

おそらく内部は東側へ下る片勾配であるみたいだ。

出口が見えてきた
隧道 反対側坑口

反対側へついた。
普通に開口しているな…

上を見ると道が2本見える。
上部が静岡県道60号であり、下部が県道から井川本村へ至る市道になる。
隧道はその法面下に穿っていたようだ。
そりゃ道路上から見ても気づかない訳だ。
だとしたらさっきの人はどうやってこの隧道に来たんだ・・・?

隧道正面は斜面になっており、平場は存在しなかった。
やはり地形的にも道路隧道や鉄道隧道ではなさそうだ。
斜面には巻上機基礎のようなものと、隧道からの排水が流れこんでいる水路があった。
さて、反対側も分かったことなので、車に戻ることにしよう。
現地調査だけでも、おそらく鉄道や道路のために造られた隧道ではないだろうことはほぼ確実になった。
では一体なんのために造られたのか。
次回【机上調査編】につづく



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