御殿場馬車鉄道──その名が世に知られていたのは 明治30年代頃の話である
官営鉄道 東海道線が御殿場経由(現在の御殿場線)で開業した当初 御厨(現在の御殿場市と小山町)の地は富士登山客で賑わったと言われています
そして
──そんな登山客輸送の為に また貨物輸送の為に 御殿場から籠坂 山中湖 富士吉田 都留を経由し 山梨県大月までを鉄路で結ぼう という壮大な計画が浮上しました
そして 山梨県側の大月~籠坂までを 都留馬車軌道(明治33年開業) 静岡県側の御殿場~籠坂までを御殿場馬車鉄道(明治31年開業)がそれぞれ起こりました
ここでは そのうち 静岡県側の御殿場馬車鉄道を取り上げたいと思う

御殿場馬車鉄道の経路である
この馬車鉄道 主に旧鎌倉往還(現 国道138号線)に沿ってつくられてる 馬車鉄道なので 今でいう路面電車みたいなものだが 一部ながらに専用軌道を持っていた
そこまでは 普通である
なんとこの馬車鉄道 当初は全線(新橋~須走)までを複線で開業している
──これは地方の馬車鉄道としてはかなり異例なことである(ちなみに後に籠坂峠まで延伸時に 一部区間を単線化して 延伸部分の軌条に転用している)

もう一つ
この馬車鉄道 須走から籠坂峠までを 馬車鉄道にしてどころか 普通鉄道にしても急勾配となる道を進んでおり しかも 最後は急勾配すぎて 「直登となった(籠坂峠への)最後の区間で滑車とワイヤーを使い巻き上げられた(御殿場市史第9巻第17章第2節より)」──つまり インクラインを使って客車を運んでいるのだ
インクラインは仕組み的にはケーブルカーと大した変わりはない ケーブルカーが初めて日本で運行されたのは大正になってからだから もしかしたら インクラインを使用した鉄道はここが初かもしれない
こんな色々と伝説が残されてる鉄道 いくら馬鉄だからとはいえ 探索しないわけには行かない
と思い ここ半年 色々と準備していました
まず メインとなる須走~籠坂峠の区間


上が明治24年測量の須走村の古地図 下が現在の須走周辺のGoogleマップ
すぐに分かるように 現在は 勾配緩和の為に かなり遠回りしているのだ
唯一共通してるのは 籠坂峠手前の急カーブのみ ちなみにインクラインは この区間を直登していたと思われる
明治24年の地図は 旧来の鎌倉往還が書かれてる この鎌倉往還に沿って馬車鉄道は建設されてる

比較としては こんな感じである 赤色が 馬車鉄道の大まかな経路である
この区間は 鎌倉往還旧道の廃道探索も兼ねて探索したいと考えてる
ちなみに 旧来から街道に、隧道はない
しかし 御殿場馬車鉄道株式会社史料(御殿場市立図書館 蔵書)の第壹期起業報告書に こんな記述を見つけた

石造隧道二ヶ所 と書かれている記述が見えるだろうか
──いやまて、この馬車鉄道にトンネルがあったなんて聞いてないぞ

御殿場市史の方も 前途の第壹期起業報告書を参考にしたのか 石造隧道二ヶ所と記述されている
しかし 果たしてどこにトンネルがあったのか?
残念ながら 須走~籠坂峠間が運行していた明治35年~大正7年の地形図は手元にはない 図書館にも当然ながらなかった
いや、そもそも本当に隧道はあるのか?
これは あくまで起業報告書だ まだ着工にすら至ってない状態である

こちらは 第貳期起業報告書である
こちらには 橋梁等の詳細な建設予算が書かれていた しかし そこに隧道の欄は抹消されていた
かわりにこのような記述が
「──前略──地盤軟弱燒砂積堆等普通ノ切盛法勾配ニテハ危儉──中略──移多ナルモ最初入札額ノ八分五厘を以テ竣功ヲヤスニ至レリ」
積堆=堆積 燒砂≒火山灰 ということで 地盤軟弱な地帯であると書かれている
第壹期と第貳期の間では 経路の細かな測量などが行われており その測量図が御殿場馬車鉄道株式会社日誌の方に掲載されていた
そこで 地盤軟弱な地帯であると判明(──というか、おそらく元々想定していただろう 須走を中心としたここら一帯は宝永噴火時の被害が最も大きかった地域である) 予定を変更して 隧道は廃止されたのだろうと中の人は予想する
現に以降の史料に 隧道の二文字はどこにも記述されていない
また 旧鎌倉往還沿いには 旧籠坂峠停車場のすぐ手前などの切通が今もまだ使用されている これらが 当初の隧道の建設予定地だったのかもしれない
というわけで 導入 というか 序章でした
次回以降より 現地調査を交えて御殿場馬車鉄道の廃線探索 および鎌倉往還旧道の廃道探索を行う予定です
【参考文献】
(なお、これ以降のレポートでも 同じ文献資料を参考にしております)
御殿場馬車鉄道株式会社史料
御殿場馬車鉄道株式会社日誌
文化財のしおり第24集
駿東郡史
御殿場市史第9巻第17章第2節
ごてんばの古道
(以上 御殿場市立図書館蔵書)
なお 一部に中の人の仮説を含みます
2015/05/15更新
以上の内容が誤りであったことが判明いたしました 詳しくは【考察編】をご覧ください
【御殿場馬車鉄道の廃線跡を辿る】
導入編
其の四/須走停車場~籠坂峠停車場(前)
其の五/須走停車場~籠坂峠停車場(後)


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